会社を辞めると、健康保険や住民税と同じように、年金の扱いも変わります。在職中は厚生年金に加入し、保険料は給与から天引きされていますが、退職して次の会社にすぐ入らない場合は、自分で国民年金への切り替え手続きをする必要があります。この手続きは会社任せにできないため、知らないまま放置してしまう人も少なくありません。この記事では、厚生年金から国民年金への切り替えの流れと、配偶者がいる場合の扱いを公的な情報をもとに整理します。
そもそも、何が変わるのか
会社員として厚生年金に加入している人は「第2号被保険者」と呼ばれます。退職して自営業になったり、しばらく無職の期間ができたりする場合は、「第1号被保険者」として国民年金に切り替える手続きが必要です。第1号被保険者とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満の自営業者・農業者・学生・無職の方などで、厚生年金等に加入しておらず、後述する第3号被保険者にも該当しない人を指します。この手続きは会社が代わりにやってくれるものではなく、本人が住所地の市区町村で行う必要があります。転職先が決まっている場合は、新しい勤務先が厚生年金の手続きを行うため、この切り替え手続きは不要です。退職から次の就職までの間に空白期間がどれくらいあるかによって、手続きが必要かどうかが変わってくるという点を、まず押さえておくとよいでしょう。
第2号から第1号になるまでの流れ
切り替えの手続きは、退職日の翌日から14日以内に行うこととされています。退職したタイミングによって、保険料の納付が始まる月の考え方が少し異なるため、順を追って確認しておきましょう。
月末退職の場合
たとえば3月末に退職し、4月1日から無職になる場合は、退職日の翌日である4月1日に厚生年金の資格を失い、同じ4月1日に国民年金第1号の資格を取得します。この場合、4月分の保険料から納付することになります。月末退職は区切りが分かりやすいため、手続きのタイミングも把握しやすいケースです。給与の締め日と月の区切りが一致しているケースが多く、退職日の翌日から新しい区分での扱いが始まると考えておけば大きな間違いはありません。
月の途中で退職した場合
月の途中で退職した場合も、基本的な考え方は同じで、退職日の翌日に厚生年金の資格を失い、国民年金第1号の資格を取得し、その月の分から保険料を納めます。ただし、月の途中で退職し、同じ月のうちに新しい会社に再就職した場合は、いったん第1号の資格取得手続きは必要になるものの、月末時点で新しい会社の厚生年金に加入していれば、その月の国民年金保険料を納める必要はありません。退職と再就職のタイミングが同じ月に重なる場合は、この扱いを覚えておくと安心です。
配偶者(第3号被保険者)がいる場合
厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」として扱われ、原則として年収130万円未満の20歳以上60歳未満の人が対象です。第3号被保険者自身は保険料を個別に納める必要がありませんが、退職に伴ってこの立場も変わることがあるため、家族がいる場合は自分だけでなく配偶者の手続きも意識しておく必要があります。
配偶者の扶養に入る場合
退職後、厚生年金に加入している配偶者の扶養に入る場合は、「国民年金第3号被保険者」の手続きが必要です。この手続きは本人が市区町村に出向くのではなく、配偶者の勤務先(適用事業所)を通じて書類を提出する形になります。手続き先が自分の窓口ではなく配偶者の勤務先になる点は、見落としやすいポイントです。配偶者の会社の総務担当者に、自分が退職したことと第3号被保険者としての手続きをしたい旨を伝え、必要な書類を教えてもらうところから始めるとスムーズです。
配偶者が扶養から外れる場合
逆に、厚生年金に加入していた本人が退職すると、それまで扶養に入っていた配偶者も同時に第3号被保険者の資格を失います。この場合、配偶者自身も「国民年金第1号被保険者」への切り替え手続きを行い、国民年金保険料を納める必要が出てきます。自分が退職したことで、配偶者の年金の扱いにも影響が及ぶという点は見落としやすく、家族全体の手続きとして考えておく必要があります。
保険料を減らす・待ってもらう方法
退職して収入が減り、国民年金保険料の納付が難しくなることもあると思います。所得が少ないなど経済的に困難な事情がある場合は、申請して承認を受けることで保険料が免除される制度があります。免除には全額・4分の3・半額・4分の1といった段階があります。また、退職や失業を理由に保険料の納付が難しくなった場合には、「失業等による特例免除」という制度を利用できる場合もあります。50歳未満の人については、本人と配偶者の所得が一定の基準内であれば保険料の納付が猶予される「納付猶予制度」もあります。これらの制度は自動的に適用されるものではなく、いずれも本人からの申請が前提になっている点に注意が必要です。申請には所得の状況が分かる書類などが必要になる場合があるため、市区町村の窓口や年金事務所であらかじめどの制度が使えそうか相談してから申請書類をそろえるとスムーズです。
未納のままにするとどうなるか
「どうせ払えないから」と保険料を未納のままにしてしまうと、将来受け取れる年金額が減るだけでなく、万が一のときの障害年金や遺族年金を受け取れなくなる可能性もあります。免除や猶予の制度を利用すれば、こうした年金を受け取る権利を保ちながら、実際の納付だけを先送りにすることができます。未納と免除・猶予は見た目には似ていても、将来受け取れる権利の面で大きく異なるため、支払いが難しいと感じたときは、未納のまま放置せず、早めに市区町村の窓口や年金事務所に相談することをおすすめします。「あとでまとめて払えばいい」と考えて先送りにすると、気づかないうちに未納期間が長くなり、将来の年金額に影響する期間が積み重なってしまうこともあるため、負担が大きいと感じた時点で早めに動くことが大切です。
まとめ
退職して厚生年金から国民年金へ切り替える際は、退職日の翌日から14日以内の手続きが必要で、退職のタイミングによって保険料の納付が始まる月の扱いが変わります。配偶者がいる場合は、配偶者自身の年金の区分も変わる可能性があるため、あわせて確認が必要です。保険料の納付が難しいときは免除・納付猶予の制度もあるため、放置する前に相談することをおすすめします。具体的な手続きや制度の詳細は状況によって異なる場合があるため、最終的な確認はお住まいの市区町村の窓口や年金事務所、ねんきんダイヤルなどで行うことをおすすめします。
退職後の公的手続きは年金だけではありません。健康保険の切り替えについては「国民健康保険への切り替え|退職後14日以内にやること」、住民税については「退職後に届く住民税の請求|天引きから納付書に変わる仕組み」でそれぞれ整理していますので、あわせて確認しておくと手続き漏れを防ぎやすくなります。失業保険の手続きについては「失業保険(基本手当)の受給までの流れ」をご覧ください。


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