退職前に会社でやっておく手続き|辞めると決めたらまず確認すること

仕事がしんどい

退職を決めたとき、まず何から手をつければいいのか迷う方は少なくありません。退職後の手続きについては「国民健康保険への切り替え」「健康保険の任意継続」「年金の切替」などで整理してきましたが、退職前の段階でも、確認しておくべきこと・準備しておくべきことがいくつかあります。この記事では、意思表示の時期から、有給休暇の扱い、返却物、受け取る書類まで、退職前にやっておきたい手続きを公的な情報をもとに整理します。

退職の意思表示は、いつまでにすべきか

民法では2週間前の申し出で退職が成立する

期間の定めのない雇用契約(いわゆる正社員など)の場合、民法第627条第1項により、退職の申し出から2週間が経過すれば、会社の同意がなくても退職は成立するとされています(2026年8月時点の情報)。これは労働者側から一方的に契約を終了させられる権利であり、会社が引き止めたり、退職届の受理を拒んだりしても、法律上は2週間の経過によって契約終了の効果が生じます。ただし、年俸制など6か月以上の期間で報酬を定めている場合は、同条第3項により3か月前の申し出が必要とされています。自分の雇用契約がどちらの類型にあたるのか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

就業規則との関係、まずは自社の規定を確認

一方で、就業規則に「1か月前までに届け出ること」といった独自のルールを定めている会社も少なくありません。法律と就業規則の内容が異なる場合、強行規定である民法が優先されると考えられており、過去の裁判例でも、法律を大きく超えるような予告期間を定める規定は無効と判断される傾向にあります。とはいえ、円満に退職するためには、引き継ぎのことも考えて、就業規則に沿った早めの申し出が望ましいのも事実です。業務の引き継ぎが不十分なまま退職してしまうと、残された同僚に負担がかかるだけでなく、退職者自身の心証にも影響しかねません。法律上の最低限のルールと、職場での実務上の慣行は、同じとは限らないという前提を持っておくことが大切です。まずは自社の就業規則を確認し、規定と実務のどちらも踏まえたうえでスケジュールを組むことをおすすめします。

有給休暇の残日数、消化と買取の考え方

退職日をまたいで持ち越すことはできない

有給休暇は、退職日を超えて取得することはできません。退職者が残っている有給休暇の取得を希望した場合、会社側は基本的に時季変更権を行使できないため、拒否できないとされています。これは、退職日以降に取得を先延ばしにする代わりの手段がないためで、在職中に消化しきるのが原則です。未消化のまま退職日を迎えると、その分の有給休暇の権利は消滅してしまいます。引き継ぎのスケジュールと有給消化の希望日数を、早い段階ですり合わせておくことが望ましいでしょう。

買取は原則違法、ただし例外がある

有給休暇の買取は、労働基準法第39条により原則として違法とされています。ただし、①法律を上回る特別休暇等の付与分、②2年の消滅時効を過ぎた分、③退職時に消化しきれず余った分、については例外的に買取が認められています。もっとも、買取は会社の法律上の義務ではないため、会社側が買取に応じない可能性も十分にあります。買取金額の計算方法(通常賃金・平均賃金・標準報酬月額のいずれを基準にするか等)や、実際に買取に応じてもらえるかどうかは会社の規定によって異なるため、自社の就業規則を確認したうえで、早めに人事担当者へ相談しておくことをおすすめします。有給休暇の扱いは退職時のトラブルになりやすい部分でもあるため、口頭でのやり取りだけでなく、書面やメールなど記録に残る形で確認しておくと安心です。

会社への貸与物、何を返却するか

代表的な返却物と、健康保険証の扱い

退職時には、会社から支給された物品や、業務で作成した成果物をすべて返却する必要があります。代表的な返却物としては、社員証や名刺、ロッカーの鍵、パソコンや携帯電話などの電子機器、業務で使用したノートや資料、制服などが挙げられます。業務中に作成した資料やデータ、顧客情報などの機密情報についても、破棄や返却の対象になります。健康保険証についても、退職日までに返却するのが基本的な扱いですが、2024年12月以降は紙の健康保険証の新規発行が終了しており、マイナ保険証のみを利用している場合は返却物自体が発生しません(2026年8月時点の情報)。扶養家族分の保険証がある場合は、その分もあわせて返却が必要になります。

返却のタイミングと確認方法

返却は最終出社日に手渡しするのが一般的ですが、最終出社後もしばらく在籍が続く場合は、退職日以降に郵送で返却するケースもあります。郵送で返却する場合は、追跡できる方法を選んでおくと、届いたかどうかで後々トラブルになるのを防ぎやすくなります。返却すべき具体的な品目や方法は会社ごとに異なるため、事前にリストなどで確認しておくと安心です。返却物の不足があると、最終的な退職手続きが滞る原因にもなりかねないため、余裕を持って準備しておくことをおすすめします。

退職時に受け取る書類を整理しておく

源泉徴収票は退職後に郵送で届く

退職時に会社から受け取るべき主な書類には、源泉徴収票と離職票があります。給与所得の源泉徴収票は、退職後遅滞なく(おおむね1か月以内を目安に)交付することが求められており、通常は退職後に自宅へ郵送されます。退職日にその場で受け取れるものではない、という点は知っておくとよいでしょう。年内に転職先で年末調整を行う場合や、確定申告を行う場合に必要になる書類のため、届いたらなくさないよう保管しておくことが大切です。

離職票は会社の手続き後、郵送で届く

ハローワークへの失業給付の申し込みに使う離職票は、会社が退職日の翌日から10日以内に手続きを行ったうえで発行され、一般的に郵送で届きます。2025年の法改正により、マイナポータル経由での電子的な受け取りも可能になりました(2026年8月時点の情報)。このほか、雇用保険被保険者証や、希望に応じて健康保険資格喪失証明書、退職証明書なども受け取ることができます。次の転職先が決まっている場合は、離職票そのものが不要になることもありますが、決まっていない場合は失業給付の手続きに欠かせない書類になるため、退職前に「離職票の交付を希望する」旨を会社に伝えておくと確実です。離職票がなかなか届かない場合の対処法については、離職票が届かないときの対処で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

まとめ

退職前にやっておくべきことは、大きく分けて「意思表示の時期」「有給休暇の扱い」「返却物」「受け取る書類」の4つです。民法上のルールと就業規則の両方を踏まえ、早めにスケジュールを組んでおくことで、退職後の手続きもスムーズに進めやすくなります。それぞれの項目は独立しているようで、実際には引き継ぎのスケジュールと有給消化の計画が連動していたり、返却物の準備が受け取る書類のタイミングに影響したりと、互いに関係し合っています。退職を決めた時点で、一度全体像を書き出しておくと、抜け漏れを防ぎやすくなるはずです。会社ごとに規定が異なる事項も多いため、自社の就業規則を確認しておくことをおすすめします。また、制度は改正されることがあるため、最新の情報は管轄のハローワーク等で確認することをおすすめします。退職後の健康保険については健康保険の任意継続、住民税については退職後に届く住民税の請求、年金については厚生年金から国民年金への切り替えで詳しく解説しています。

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